切開式重瞼術は,上眼瞼を全幅にわたり切開して内部処理を行い,二重を形成する手術です。二重手術の切開法(切開式重瞼術),上瞼のたるみ取り(上眼瞼除皺術),及び眼瞼下垂手術は,いづれも良い形態の上眼瞼を作る手術です。重点をおく目的が何かによって多少の違いが生じることがありますが,本質的にはほぼ同じです。よってたるみ取りの手術,眼瞼下垂の手術もここで解説します。

どの様な二重がよいか

二重の形態についての好みは人それぞれですが,私が切開で二重を形成するときに重視していることがあります。
瞼を閉じたときに横から見て自然であること,そしてそこから開瞼していくときに,適度の遊びを経て二重が折れ込んでいくことです。
二重とは単なる溝にあらず。動的な自然さを伴わなければなりません。

どの様な瞼がよくないか

開瞼したときに,二重のラインから睫毛までの皮膚がたるんで睫毛にかぶってくるものは俗に「ハム目」と称されますが,避けるべきです。
また,繰り返しになりますが,二重というのは単なる瞼の窪みではありません。閉瞼時や下方視時に明らかに凹んでいる様な瞼は自然ではありません。
更に,皮膚切除のし過ぎで,重瞼ラインを境に睫毛側と眉毛側の皮膚の厚みのギャップが目立つ様な瞼は自然ではありません。

どの様に二重を形成するか(デザイン)

まず,二重のデザインは埋没法と切開法で異なることを認識するべきです。開瞼したとき重瞼線から睫毛縁までの皮膚が弛んで睫毛にかぶる,俗に言う「ハム目」にならないためには,個人差はありますが,切開線を睫毛縁から8mm程度までの高さにする必要があります。それで開瞼時の二重幅が狭すぎると思うようであれば,余剰皮膚を切除する必要があります。しかしこの部位で皮膚を切除しすぎると,皮膚厚のギャップによる不自然さが出てきますので,ある程度以上の皮膚切除が必要な場合は眉毛下皮膚切除術の併用を検討する必要があることがあります。

どの様に二重を形成するか(内部処理)

私は眼輪筋や瞼板前組織の切除は最低限にとどめます(全く切除しないことが殆どです)。
これらを切除しすぎると,閉瞼時の不自然な凹みの原因になります。
重瞼線下の眼輪筋を適当な深さで挙筋腱膜に固定し,閉瞼から開瞼に至る動きを適宜確認しつつ二重を形成していきます。

ところで,二重というのは,開瞼したときに適当なところで皮膚が折れて形成されるものです。眼瞼下垂の症状があって開瞼が不十分であれば,よい二重は形成できません。その様な場合は挙筋腱膜を前転固定し,見開きを改善しつつ二重を形成していきます。
また,瞼が厚い場合は眼窩脂肪や眼輪筋下脂肪(ROOF)の減量を考慮します。

眼瞼下垂について

眼瞼下垂症は何らかの原因で上眼瞼の開きが悪い状態をいいます。生来のもの(先天性眼瞼下垂)と後天的な要因によるもの(後天性眼瞼下垂)とに分類できます。後天性のもののうち,頻度が高いものは腱膜性眼瞼下垂です。挙筋腱膜の瞼板への停止が脆弱化し,挙筋の収縮が瞼板に伝わりにくくなって生じます。リスクファクターとしては,加齢や長年のハードコンタクトレンズの装用,アトピー性皮膚炎などが挙げられます。
治療は挙筋前転で,挙筋腱膜を瞼板に前転固定して上眼瞼挙筋の力が瞼板に伝わる様にします。

偽性眼瞼下垂について

眼瞼下垂症では挙筋機能(前頭筋を抑制した状態で,下方視から上方視まで開瞼したときに瞼縁が動く距離)が低くなっていますが,挙筋機能が正常であっても,皮膚のタルミにより開瞼が不十分にみえることがあります。これを偽性眼瞼下垂といったり皮膚弛緩性眼瞼下垂といったりします。余剰皮膚を切除することで治療が可能です。余剰皮膚を重瞼線の部分で切除する場合は,上述の切開式重瞼術と同様の術式を採ります。しかし,重瞼線部で皮膚切除幅を取り過ぎると,睫毛側と眉毛側で皮膚の厚みのギャップを生じ,不自然となることがあります。その様な場合は眉毛下皮膚切除術を考慮する必要があるかもしれません。

副作用・リスク

感染,左右差,思い通りの形にならない,後戻りなど

術後の経過

術後5-7日で抜糸します。内出血が消退するまで2週間程度かかります。大きな腫れが引くまでに2週間から1ヶ月程度かかります。完成までには半年程度要します。
術後1ヶ月,3ヶ月,6ヶ月で経過観察に御来院いただきます。

※記載は一般的な経過の場合であり,個別のケースに於いては異なることがあります。