埋没式重瞼術は埋没法と称され広く行われている比較的手軽な重瞼術です。
ここでは埋没法に関する一般的な解説をし,また,当院で行っている埋没法について,更に埋没法についての当院の考え方について記載します。
二重瞼の成因
生来の二重は,挙筋腱膜から皮膚に穿通枝が伸び,これが開瞼時に皮膚を引き込むことで生じます。
二重の手術は,切開法にせよ埋没法にせよ,この穿通枝のかわりとなる構造を作るところに本質があります。
埋没法は眼瞼の動的成分と皮膚を糸で連続させ,開瞼時に皮膚の適当なところが折れ込む様にする手術です。
埋没法の分類
埋没法は眼瞼の動的成分と皮膚を連続させる様に糸を埋め込む手術です。したがって,動的成分のどこに固定源を求めるか(瞼板法/挙筋法)が最も本質的な分類です。そのほか,皮膚側の留め方(点留め/線留め)や結び目をどこに持ってくるか(皮膚側結紮/結膜側結紮)で分類します。それぞれ独立ですので,23=8通りの分類があるといえます。
当院で行っている埋没法
当院では,原則として瞼板法,線留め,皮膚側結紮で埋没法を行っています。
6点交叉
1本の糸でジグザグに一筆書きし,皮膚側を6点で固定し,固定点の間は線留めします。「自然癒着法」などと呼ばれることもある様ですが,この方法が他の埋没法と比較して特に癒着を作り出すとは考えられませんので,当院はその様な呼び方はしません。
4点交叉
6点交叉法を簡略化し,4点での固定とした方法です。
2点
2点の固定点にループをかけます。簡便で,一部が後戻りした場合の小修正などに用います。
当院が瞼板法を採用する理由
挙筋法では挙筋腱膜の裏側にあるMüller筋に糸がかかります。Müller筋を損傷すると,眼瞼痙攣やその他の瞼の違和感など改善困難な合併症が生じる可能性が非常に稀ながらあるため,出来るだけ埋没法でMüller筋を触るべきではないと考えています。勿論極端に広い二重を希望される場合は挙筋法を採用すべき局面もあるかもしれませんが,当院では原則として瞼板法を採用しています。
当院が皮膚側結紮を採用する理由
結膜側結紮(いわゆる裏留め)は,結び目が透見しにくいなどの利点から昨今流行している様です。しかしながら、万一埋没糸が露出したときに角膜損傷のリスクがある,抜糸が困難なことがある,などのデメリットがあるため,当院では皮膚側結紮を採用しています。
埋没法のリスク
埋没法の主なリスクは,埋没糸露出,埋没糸感染,後戻りです。これらのうち埋没糸の露出や感染は結び目を起点に発生することが多いため,当院では結び目が少ない掛け方を採用しています。
後戻りについては,二重の手術として埋没法を選択する以上仕方のないものです。眼瞼下垂のある場合や瞼が厚い場合,或は幅広い二重を希望する場合に戻りやすい傾向にあります。
その他,瞼板法のリスクとして,瞼板の変形があります。軽度の変形であれば殆ど問題はありませんが,歪みが高度だと瞬目の際に違和感が生ずることがあります。これを避けるためには結紮を適切な強さでする必要があります。
「脂肪取り」がない理由
私は埋没法と同時に上眼瞼の脱脂を原則として行いません。理由は,
・多くの場合に,上眼瞼の脱脂により見た目の厚ぼったさは殆ど変わらない
・切除すべき脂肪量の判断は切開法でも難しい。埋没法のついでに行う小切開の視野から行うべきでない(見た目には殆ど影響しないのですが)
・埋没糸を抜去して戻すことが出来るのが埋没法の利点ですが,脱脂をすると埋没糸抜糸が困難になることがあり,埋没法のよいメリットを消してしまう
・埋没法では出来るだけダウンタイムを軽くしたく,そのためにはシンプルな術式を採用すべきであるので,余計なことはしない方がよい
などです。勿論脱脂が良い適応となる方もいますので,そういう場合は臨機応変に対応しています。
術後の経過
2週間で大きな腫れが引き,術後1ヶ月程度で完成となります。
※記載は一般的な経過の場合であり,個別のケースに於いては異なることがあります。
埋没糸抜糸について
埋没法は,抜糸をすることで戻すことが出来るのがその大きなメリットです。当院の埋没法は,抜糸が必要になる可能性を考慮し,抜糸に難渋する様な糸のかけ方を採用していません。
他院で行われた埋没法の抜糸は,どの様な術式で行われた埋没法かによって難易度が大きく変わってきます。